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股関節の痛み

スポーツ中の股関節の痛み

スポーツ中に股関節が痛むことは、 運動を続ける上で大きな問題となります。股関節は、体の中心である「体幹」と「脚」をつなぐ、非常に大切な関節です。歩く、走る、跳ぶ、蹴る、体をひねるなど、スポーツの様々な動きで大きな役割を果たしており、それだけに大きな負担もかかりやすい場所です。

もしスポーツ中に股関節に痛みを感じたら、それは体が「助けてほしい」というサインを出しているのかもしれません。痛みを我慢して無理にスポーツを続けると、症状がひどくなったり、思ったように体が動かせなくなったりして、パフォーマンスが落ちるだけでなく、スポーツそのものが楽しめなくなってしまうこともあります。特に、股関節の周りにはたくさんの筋肉や靭帯があり、複雑な動きを支えているため、痛みの原因を見つけるには専門的な知識が必要です。

当クリニックでは、スポーツによる股関節の痛みに詳しい医師が、皆さんの痛みの原因をしっかり見つけ、一人ひとりの状況や「またスポーツを思いっきり楽しみたい」という気持ちに寄り添った治療プランを提案します。このページでは、スポーツをされる方に起こりやすい股関節の痛みについて、その症状、どのように診断するか、痛みの原因、考えられる病気、そしてどのような治療法があるのかを分かりやすく説明します。

股関節の痛みの症状について(スポーツ中の場合)

スポーツ中に感じる股関節の痛みは、痛む場所や動きによって様々です。ご自身の痛みがどのようなものかを知ることは、原因を見つけるための大切な手がかりになります。

  • 痛む場所:
    • 足の付け根(鼠径部):最も多くみられる場所です。股関節を曲げたり、脚を上げたりする時に痛むことが多いです。
    • 股関節の外側(お尻の横):走ったり、片足で立ったりする時に痛むことがあります。お尻の筋肉の問題や、股関節の外側の炎症などが考えられます。
    • お尻の奥の方:座っていたり、股関節をひねったりする時に痛むことがあります。股関節の中の問題や、お尻の筋肉の硬さなどが関係していることがあります。
    • 太ももの内側や前側:股関節の付け根の痛みと一緒に出たり、関連して痛みが出たりすることがあります。
  • 痛むタイミングや種類:
    • スポーツをしている最中の痛み:特定の動き(キック、ジャンプ、ランニング、開脚など)をした時にズキッと痛む。
    • スポーツ後の痛み:練習や試合が終わってからしばらくして痛みが出てくる。
    • 動き始めの痛み:座っていて立ち上がる時や、歩き始めに痛むが、少し動くと軽くなる。
    • 急な鋭い痛み:何かをした瞬間に股関節に「ピキッ」と電気が走るような強い痛みが走る。これは怪我の可能性があります。
    • 鈍い痛みが続く:特定の動きだけでなく、常に股関節の周りが重だるい、ジンジンするといった痛みが続く。
    • 股関節の引っかかり感やクリック音:股関節を動かした時に、何かが引っかかるような感じがしたり、「カクン」「コキッ」といった音が聞こえたりする。痛みを伴う場合は、股関節の中にある「股関節唇」という組織が傷ついている可能性があります。
    • 股関節の動きが悪くなる:股関節を大きく開いたり、内側に閉じたり、回したりといった動きの範囲が狭くなる。靴下を履く、爪を切る、和式トイレを使うといった日常生活の動作でも気づくことがあります。
    • 股関節が抜けるような不安定感:特に怪我をした後に、股関節がグラグラする、力が入りにくい、といった感じがする。

これらの症状は、原因によって様々です。どのような時に、どこが、どのように痛むのかを覚えておくと、診察の時に役立ちます。

股関節の痛みの診断方法について

スポーツ中の股関節の痛みの原因を正確に調べるためには、皆さんが行っているスポーツや、どのような動きで痛むのかといったことを詳しくお伺いすることがとても大切です。それに加えて、体の状態を調べ、必要に応じて画像検査を行います。

  • 問診:どのようなスポーツをしているか、いつから、どのような時に、どのあたりが、どのように痛むのか、過去に股関節やその周辺を怪我したことがあるか、練習の量や体のケアの方法などを詳しくお伺いします。痛みが始まったきっかけや、痛みが和らぐ・悪化する状況なども大切な情報です。
  • 身体診察:股関節の周りに腫れや熱がないか、押すと痛む場所はどこか(圧痛)、股関節を色々な方向に動かした時の範囲(可動域)はどうかを調べます。また、特定の動きで痛みが再現されるかを確認したり、股関節の安定性を調べるための特別なテスト(徒手検査)を行ったりします。体のバランスや、股関節だけでなく腰や膝、足首など他の関節の状態も一緒に確認することがあります。
  • 画像検査:
    • レントゲン検査(X線検査):骨の形や、股関節の関節の隙間の状態、骨の変形などを確認できます。特に、股関節の形が生まれつき浅い「臼蓋形成不全」などの診断に役立ちます。
    • MRI検査:骨だけでなく、股関節の中にある軟骨や股関節唇、靭帯、周りの筋肉や腱といった軟らかい組織の状態を詳しく調べることができます。スポーツ中の股関節の痛みでは、股関節唇損傷や、筋肉・腱の炎症、疲労骨折などを診断する上で非常に重要な検査です。

これらの検査で得られた情報と、問診や身体診察の結果を組み合わせて、痛みの根本的な原因を見つけ出します。

股関節の痛みの原因について(スポーツ中の場合)

スポーツ中に股関節が痛くなる原因は様々ですが、スポーツ activitiesの特性と深く関係しています。

  • スポーツによる使い過ぎ(オーバーユース):
    • 筋肉や腱の炎症:走る、蹴る、ジャンプする、開脚するなど、股関節を繰り返し使うことで、股関節の周りの筋肉や腱(特に股関節を曲げる筋肉や内側の筋肉、お尻の筋肉など)に負担がかかりすぎて炎症が起きます。腸腰筋炎、内転筋炎、坐骨結節炎などが含まれます。
    • 疲労骨折:骨に繰り返し負担がかかることで、骨に小さなヒビが入るものです。ランニングやジャンプが多いスポーツで、太ももの骨(大腿骨)の付け根などに起こることがあります。
  • 股関節の構造的な問題:
    • 股関節インピンジメント(FAI):股関節の骨(大腿骨の頭と骨盤の臼蓋)の形に生まれつきの、あるいは後からできた微妙な変形があるため、股関節を特定の方向に大きく動かした時に骨と骨がぶつかり、関節の中にある股関節唇や軟骨を傷つけてしまう状態です。股関節を深く曲げたり、内側にひねったりする動きが多いスポーツ(サッカー、アイスホッケー、ダンスなど)で痛みが出やすいです。
    • 股関節唇損傷:股関節の臼蓋の縁についている線維軟骨である股関節唇が傷つくものです。FAIによって傷つけられることが多いですが、急なひねりや外傷でも起こります。引っかかり感やクリック音、痛みが特徴です。
  • 筋肉の機能やバランスの問題:
    • 筋力不足や硬さ:股関節を支える筋肉(特に体幹やお尻の筋肉)の力が弱かったり、硬かったりすると、股関節の動きがスムーズでなくなり、特定の部位に負担がかかりやすくなります。
    • 体の使い方のクセ:姿勢が悪かったり、特定の動作の時に股関節をうまく使えていなかったりすると、股関節に偏った負担がかかり、痛みにつながることがあります。
    • グローインペイン症候群(鼠径部痛症候群):股関節の付け根(鼠径部)周辺の様々な場所が痛む状態の総称です。股関節の構造的な問題や、体幹、股関節、太ももの筋肉の機能不全などが複雑に絡み合って起こると考えられており、特にサッカー選手に多く見られます。「スポーツヘルニア」と呼ばれます。
  • 外傷(一度の大きな怪我):
    • 打撲や筋挫傷:ぶつけたり、筋肉を強く損傷したりする。
    • 脱臼や骨折:非常に強い力が加わって股関節が外れたり、骨が折れたりする。スポーツ中の衝突などで起こる可能性があります。
  • その他の原因:
    • 腰や骨盤の問題:股関節の痛みのように感じていても、実際には腰や骨盤の関節、神経の問題が原因であることもあります(関連痛)。
    • 関節の炎症:関節リウマチなどの病気によって、股関節に炎症が起きて痛みが出ることがあります。
    • 成長期の特有の問題:子どもの場合、大腿骨頭すべり症やペルテス病など、成長期の骨に起こる特有の病気が股関節の痛みの原因となることがあります。

股関節の痛みの病気の種類について(スポーツをする方に多いもの)

スポーツを積極的にされる方に比較的多くみられる股関節の病気や状態には、以下のようなものがあります。

  • 股関節インピンジメント(FAI):股関節の骨の形の問題で、特定の動きで骨がぶつかり、痛みや引っかかり感、そして股関節唇や軟骨の損傷を引き起こします。若いスポーツ選手にもみられます。
  • 股関節唇損傷:股関節の中にある股関節唇が傷つくものです。FAIと合併していることが多いですが、外傷や繰り返しの負担でも起こります。痛み、引っかかり感、クリック音が特徴です。
  • グローインペイン症候群(鼠径部痛症候群):股関節の付け根周辺の痛みの総称で、筋肉、腱、構造的な問題など様々な要因が関係しています。特にキック動作や急な方向転換が多いスポーツで発生しやすいです。
  • 筋・腱付着部炎:股関節の周りの筋肉や腱が骨につく部分に炎症が起きて痛むものです。腸腰筋炎、内転筋炎、ハムストリングス付着部炎などがあります。使い過ぎが主な原因です。
  • 疲労骨折:股関節周辺の骨に繰り返しメカニカルな力が加わることで起こる骨の不完全な骨折です。練習量を急に増やしたり、硬い地面での練習を続けたりすることで発生しやすいです。
  • 関節唇損傷:(前述の股関節唇損傷と同じものを指します)
  • 変形性股関節症(初期):長年のスポーツによる負担や、生まれつきの股関節の形(臼蓋形成不全など)が原因で、若い頃から軟骨のすり減りが始まり、スポーツ中や後に痛みを感じることがあります。
  • 神経性の痛み:股関節の周りを通る神経が圧迫されたり刺激されたりすることで、股関節や太ももに痛みやしびれが出ることがあります。坐骨神経痛や、腰部の問題による神経の圧迫などが考えられます。
  • 成長期の股関節疾患:子どもの場合、大腿骨頭すべり症(太ももの骨の成長線でズレが生じる)や、ペルテス病(大腿骨頭への血行が悪くなり壊死する)など、成長期の骨に関する病気が股関節痛の原因となることがあります。

股関節の痛みの治療法(スポーツ中の場合)

スポーツ中の股関節の痛みの治療では、痛みをmechanicalに取り除くだけでなく、安全に元のスポーツレベルに戻り、今後も長くスポーツを楽しめるようにサポートすることを目標とします。治療方法は、痛みの原因や症状の severity、皆さんが目指すスポーツレベルなどによって carefullyに決められます。

  • 手術をしない治療法(保存療法):多くの股関節の痛みに対して、まず最初に行われます。
    • 安静にして活動量を調整する:痛みを悪化させるような動きや練習は控えたり、量を減らしたりします。完全に休むのではなく、痛まない範囲でできるトレーニングを続けることが、筋力を保つために大切です。
    • アイシングや温熱療法:痛みが強い時期は冷やして炎症を抑え、慢性の痛みの場合は温めて血行を良くすることがあります。
    • お薬を使う(薬物療法):痛みや炎症を抑えるために、飲み薬や湿布などが処方されます。
    • 物理療法:電気刺激や超音波などを使って、痛みを和らげたり、硬くなった筋肉を緩めたりします。
    • リハビリテーション:スポーツ中の股関節の痛みにとって、リハビリテーションは非常に重要な治療法です。
      • ストレッチ:股関節やその周り(太ももの前後の筋肉、お尻の筋肉など)の硬くなった筋肉を伸張させ、体の柔軟性を高めます。
      • 筋力トレーニング:股関節を安定させるために、体幹の筋肉やお尻の筋肉を中心に強化します。痛みの原因となっている体の使い方の癖を直し、正しい体の動きを身につけるトレーニングを行います。
      • 体の使い方の指導:スポーツの動作を分析し、股関節に負担がかかりにくい体の使い方やフォームを指導します。
      • バランス能力の向上:片足立ちや不安定な場所でのトレーニングで、体のバランス感覚を養い、スポーツ中の予測しづらい動きにも対応できる力をつけます。
      • 段階的なスポーツ復帰プログラム:痛みが軽くなってきたら、軽いジョギングから始め、徐々にスピードを上げたり、方向転換、ジャンプ、キックなど、皆さんがしているスポーツに必要な動きの練習を増やしていきます。体の反応を見ながら、焦らずゆっくり進めることが大切です。
    • 注射による治療:痛みが強い場合や炎症が強い場合に、関節の中に炎症を抑える薬(ステロイド)や、関節の動きを良くするヒアルロン酸などを注射することがあります。
    •  
  • 手術による治療法:保存療法では十分な効果が得られない場合や、股関節インピンジメントや重度の股関節唇損傷、特定の骨の問題などを取り除く必要がある場合に行われます。
    • 関節鏡(内視鏡)手術:小さな傷口から細いカメラを入れて行う手術です。股関節インピンジメントの原因となっている骨の変形を削ったり、傷ついた股関節唇を縫い合わせたり切除したりします。体への負担が比較的少なく、回復も早い傾向があります。
    • 骨切り術:股関節の構造的な形の問題(臼蓋形成不全など)によって股関節に負担がかかっている場合に、骨を切って形を整え、股関節への負担を減らす手術です。比較的若い方に行われることがあります。

当クリニックでは、スポーツ中に股関節の痛みを感じている皆さんが、安心してスポーツに戻り、長く活動できるよう、一人ひとりの症状や体の状態、そしてスポーツへの熱い気持ちに寄り添った最適な治療とサポートを提供いたします。股関節の痛みでお悩みの方は、専門家に相談し、原因を突き止めて適切な対処を始めることが大切です。ぜひ一度、当クリニックにご相談ください。

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