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腰の痛み

スポーツ中の腰の痛み

スポーツに熱中している時に、「腰が痛いな」「腰に違和感があるな」と感じることはありませんか?腰は、私たちの体の中心であり、体を支えたり、ひねったり、曲げたりと、スポーツのあらゆる動きに欠かせない、とても大切な部分です。そのため、スポーツをする上で腰には大きな負担がかかりやすく、様々なケガや痛みが出やすい場所でもあります。

腰の痛みには、骨の疲労骨折、椎間板(ついかんばん)というクッションの異常、筋肉の炎症など、色々な種類があります。痛みをそのままにしておくと、スポーツを続けられなくなったり、日常生活にも影響が出たりすることがあります。正確な診断と適切な治療を受けることで、痛みを和らげ、また安心してスポーツに戻れるようになります。

腰の痛みの症状について

腰の痛みは、何が原因で起きているかによって、出方が大きく変わります。

  • 鈍い痛みから鋭い痛みまで:「なんとなく重だるい」「ギクッと電気が走るような痛み」「ズキズキとした痛み」など、痛みの種類は様々です。
  • 特定の動きで痛む:前かがみになった時、体をひねった時、ジャンプして着地した時、走った時など、特定のスポーツの動作で痛みが増したり、特定の姿勢で楽になったりすることがあります。
  • 安静にしていても痛む:スポーツをしていない時や、寝ている時にも痛みが続く場合は、炎症が強く起きているか、少し重い病気の可能性も考えられます。
  • 足やお尻への放散痛(ほうさんつう)やしびれ:腰だけでなく、お尻、太もも、ふくらはぎ、足先にかけて痛みやしびれが広がる場合があります。これは、腰の神経が圧迫されているサインかもしれません。
  • 体の動かしにくさ:腰が痛くて、体が前や後ろに曲げにくくなったり、左右にひねりにくくなったりします。
  • 筋力低下:足に力が入りにくくなる、感覚が鈍くなる、といった症状が出ることもあります。
  • 朝のこわばり:朝起きた時に腰がこわばって動きにくいが、しばらくすると楽になる、といった症状もよく見られます。

これらの症状は、スポーツの種類やどれくらい運動しているかによっても異なりますし、いくつかの症状が同時に現れることもよくあります。症状の出方によって、原因となる病気をある程度推測することができます。

腰の痛みの診断方法について

腰の痛みがなぜ起きているのかを正確に突き止めるためには、専門のお医者さんによる様々な検査が必要です。

  1. 問診:
    • いつから痛みがあるのか、どんな時に痛くなったのか(急に痛くなったか、だんだん痛くなったか)。
    • 痛む場所、どんな痛みか(重い痛み、鋭い痛みなど)、どのくらい痛いか。
    • 痛みが強くなる動きや、楽になる動き。
    • 腰だけでなく、足やお尻にしびれや痛みがあるか。
    • 今まで腰をケガしたことがあるか、過去の病歴。
    • どんなスポーツを、どれくらいの頻度でしているか、練習内容やフォームについて。 こうしたお話から、痛みの原因を探るための手がかりを見つけます。
  2. 視診・触診(見て触ること):
    • 姿勢や体の左右のバランス、背骨の曲がり具合などを確認します。
    • 腰の筋肉に張りがないか、特定の場所を押すと痛みがないか(圧痛)を調べます。
    • 体を動かしてもらい、どの動きで痛みが出るか、どれくらい動かせるか(可動域)を確認します。
  3. 理学検査(体を動かしてもらう検査):
    • SLRテスト(下肢伸展挙上テスト):仰向けに寝て、膝を伸ばしたまま足を上げてもらい、腰やお尻、足に痛みやしびれが出るかを確認します。これは神経が圧迫されているかどうかの目安になります。
    • 筋力テストや感覚テスト:足の指や足首に力が入るか、皮膚の感覚が鈍くなっていないかなどを確認し、神経の働きを評価します。
    • 股関節の動きの評価:腰の痛みは股関節の硬さや動きの悪さが関係していることもあるので、股関節の動きも確認します。
  4. 画像検査:
    • X線検査(レントゲン):骨の形や、背骨の並び、骨折、骨の変形、背骨のずれ(脊椎分離症、脊椎すべり症など)などを確認するために行います。特に、体を曲げたり反ったりした状態でレントゲンを撮る「動態撮影」は、背骨の不安定さを評価するのに役立ちます。
    • MRI(磁気共鳴画像法):骨だけでなく、椎間板(ついかんばん)、神経、筋肉、靭帯などの柔らかい組織(軟部組織)の状態を詳しく見ることができます。椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)、疲労骨折、筋肉の炎症、腫瘍などを診断するのにとても役立ちます。
    • CT(コンピュータ断層撮影):骨の小さな骨折や、骨の形をより詳しく見ることができます。疲労骨折や脊椎分離症の診断に用いられることがあります。

これらの検査を組み合わせて、痛みの正確な原因を特定し、最適な治療計画を立てていきます。

腰の痛みの原因について

スポーツ中に腰が痛くなる原因はたくさんありますが、大きく分けて「ケガによるもの(外傷性)」と「使いすぎや体の変化によるもの(非外傷性)」に分けられます。

  1. ケガによる原因(外傷性):
  • 急性腰痛(ぎっくり腰):重いものを持ち上げたり、急に体をひねったりした時に、腰の筋肉や靭帯が急に損傷して起こる痛みです。スポーツ中にも、急な動きや不自然な体勢で発症することがあります。
  • 脊椎分離症(せきついぶんりしょう):背骨の後ろの部分(椎弓)が、繰り返しの負担(特に体を反る動作やひねる動作)によって疲労骨折を起こす病気です。成長期に激しいスポーツをする選手に多く見られます。野球、サッカー、バレーボール、バスケットボール、体操など、体を反ったりひねったりする動作が多い競技でよく発生します。
  • 椎間板ヘルニア:背骨と背骨の間にある椎間板というクッションが、繰り返しの負担や強い力によって飛び出し、近くを通る神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こします。特に、前かがみになる動作や、重いものを持ち上げる動作が多いスポーツでリスクが高まります。
  • 脊椎圧迫骨折:高いところから飛び降りたり、転倒したりといった強い衝撃で、背骨の骨が潰れてしまう骨折です。骨がもろくなっている高齢者だけでなく、スポーツ中の大きな衝撃で起こることもあります。
  1. 使いすぎや体の変化による原因(非外傷性):
  • 筋・筋膜性腰痛:腰の筋肉や、筋肉を覆う筋膜に炎症やこり、疲労が蓄積して起こる痛みです。スポーツでのオーバーユース(使いすぎ)、不適切なフォーム、体の柔軟性の不足などが原因となります。多くのスポーツ選手が経験する腰痛の一般的な原因です。
  • 椎間関節性腰痛:背骨と背骨をつなぐ関節(椎間関節)に負担がかかり、炎症を起こして痛みが生じるものです。特に体を反る動作で痛みが強くなることが多いです。
  • 脊椎すべり症:背骨が前後にずれてしまう病気です。脊椎分離症が原因で起こることもありますが、分離症がなくても起こることがあります。ずれることで神経が圧迫され、痛みやしびれを引き起こすことがあります。
  • 仙腸関節炎(せんちょうかんせつえん):骨盤の仙骨と腸骨をつなぐ仙腸関節に炎症が起こり、痛みが生じるものです。腰の痛みとして感じられることが多く、特に片側のお尻や股関節の付け根あたりに痛みが広がることもあります。ランニングやジャンプ、片足に重心がかかるスポーツなどで負担がかかりやすいです。
  • 脊柱管狭窄症:背骨の中を通る神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されることで痛みやしびれを引き起こします。特に、長く歩くと足が痛くなったりしびれたりして歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」が特徴的です。加齢による変化が多いですが、スポーツでの繰り返しの負担が影響することもあります。
  • 体の柔軟性の不足や姿勢の悪さ:腰や股関節、太ももの筋肉が硬いと、スポーツ中に腰に過剰な負担がかかりやすくなります。また、スポーツフォームや日常の姿勢が悪いことも、腰痛の原因となることがあります。

腰の痛みの治療法

腰の痛みの治療は、痛みの原因、重症度、患者さんの活動レベルや目標によって異なります。まずは手術をしない方法(保存的治療)から始めますが、症状が改善しない場合や、重度の神経症状がある場合には手術が必要となることもあります。

  1. 保存的治療(手術をしない治療):
  • 安静:急性期の痛みがある場合は、無理な動きを避け、炎症を抑えるために安静にします。ただし、長すぎる安静は逆効果になることもあるので、医師の指示に従いましょう。
  • 薬物療法:
    • 非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs):炎症と痛みを抑えるために飲み薬や外用薬(湿布、塗り薬)が処方されます。
    • 筋弛緩薬:筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減します。
    • 神経痛を和らげる薬:神経の圧迫による痛みやしびれが強い場合に処方されることがあります。
    • ブロック注射:痛みの原因となっている神経の周りや、関節に直接麻酔薬やステロイドを注射することで、痛みを強力に抑えることができます。
  • 物理療法:
    • 温熱療法/寒冷療法:症状に応じて腰を温めたり冷やしたりすることで、血行改善や痛みの緩和を図ります。
    • 電気治療:低周波、干渉波、超音波治療などを用いて、痛みや炎症を軽減させ、血行を促進します。
    • 牽引療法:腰を引っ張ることで、椎間板への負担を減らし、神経の圧迫を和らげることがあります。
  • 装具療法:
    • コルセット:腰を固定し、動きを制限することで、痛みのある腰への負担を軽減します。急性期や、スポーツ中の予防として使用することがあります。
  • リハビリテーション:
    • ストレッチ:腰だけでなく、股関節や太もも、お尻の筋肉の柔軟性を高めることで、腰への負担を減らします。
    • 体幹(コア)トレーニング:お腹や背中の深部の筋肉を鍛えることで、腰を安定させ、正しい姿勢を保つ能力を高めます。これは、スポーツ中の腰痛予防に最も重要と言えるトレーニングです。
    • 筋力トレーニング:腰だけでなく、お尻や太ももなど、腰をサポートする周囲の筋肉をバランスよく鍛えます。
    • 運動指導・フォーム指導:スポーツ動作の分析を行い、腰に負担のかかりにくい効率的な体の使い方を指導します。体の使い方を見直すことで、根本的な原因の解決を目指します。
    • 姿勢指導:日常生活での正しい姿勢や、座り方、物の持ち方などを指導します。
  1. 手術療法:

保存的治療を続けても症状が改善しない場合、あるいは、足の麻痺が進行する、排泄のコントロールができなくなるといった重い神経症状が出ている場合には、手術が検討されます。

  • 椎間板ヘルニアの手術:飛び出した椎間板の一部を切除し、神経の圧迫を取り除きます。内視鏡を使った手術や、顕微鏡を使った手術など、体に負担の少ない方法が主流になっています。
  • 脊椎分離症・すべり症の手術:分離している部分を固定したり、ずれている背骨を正しい位置に戻して固定したりする手術が行われます。
  • 脊柱管狭窄症の手術:狭くなった脊柱管を広げ、神経の圧迫を取り除く手術です。

手術の後は、専門的なリハビリテーションが不可欠です。段階的に負荷を上げていき、筋力、可動域、そしてスポーツ動作に必要な体の使い方を回復させ、最終的には安全なスポーツ活動への復帰を目指します。

スポーツ中の腰の痛みは、放置すると慢性化したり、パフォーマンスの低下につながったりする可能性があります。腰に痛みを感じたら、決して軽視せず、早めにスポーツ整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。当クリニックでは、患者さん一人ひとりの症状と活動レベルに合わせた最適な治療計画をご提案し、またスポーツを楽しめるようになるまでを全力でサポートいたします。

何かご不明な点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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