脊柱管狭窄症
脊柱管とは背骨の中にある神経の通り道のことです。脊柱管狭窄症は、この脊柱管が様々な原因で狭くなり、中の神経が圧迫されることで、腰や足に痛みやしびれなどの症状を引き起こす病気です。主に加齢に伴って起こりやすく、高齢者の方に多く見られます。
ここでは、脊柱管狭窄症の概要から、具体的な症状、原因、種類、そして治療方法について詳しく解説していきます。
脊柱管狭窄症の症状について
脊柱管狭窄症の代表的な症状は、「間欠跛行(かんけつはこう)」と呼ばれるものです。これは、歩き始めは普通に歩けるのですが、しばらく歩くと(数分~数十分程度)足の痛みやしびれ、脱力感などが現れて歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになるという特徴的な症状です。
腰の症状
- 腰痛: 腰が重く感じたり、鈍く痛んだりすることがあります。ただし、腰椎椎間板ヘルニアのような激しい痛みは少ない傾向があります。
- 腰の張りやこわばり: 腰周りの筋肉が緊張して、動きにくさを感じることがあります。
足の症状(間欠跛行)
- 痛み: 太ももからふくらはぎ、すね、足先にかけて、締め付けられるような、または重だるいような痛みが出ることがあります。
- しびれ: 足の裏や指先にかけて、ジンジン、ピリピリとしたしびれを感じることがあります。
- 脱力感: 足に力が入らなくなり、歩きにくくなることがあります。
- 排尿・排便障害: まれに、膀胱や直腸の機能に影響が出て、尿が出にくくなったり、便が出にくくなったりすることがあります。このような症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
脊柱管狭窄症の症状は、体を反らすと悪化し、前かがみになると楽になることが多いのが特徴です。例えば、自転車に乗る姿勢や、シルバーカーを押す姿勢では比較的楽に歩けることがあります。
脊柱管狭窄症の原因について
脊柱管狭窄症の主な原因は、加齢に伴う背骨の変化です。長年の使用により、背骨やその周りの組織が変形し、脊柱管が狭くなってしまいます。
加齢による変化
- 椎間板の変性: 椎間板の水分が減少し、高さが低くなることで、背骨と背骨の間が狭くなります。
- 靭帯の肥厚: 脊柱管の周りの靭帯(黄色靭帯など)が厚くなり、脊柱管を狭めます。
- 骨の変形(骨棘形成): 関節や椎体の縁に骨の棘(とげ)のようなものができ、神経を圧迫することがあります(変形性脊椎症)。
- 椎間関節の変形: 背骨の関節である椎間関節が変形し、肥大することで脊柱管を狭めます。
その他の要因 - 椎間板ヘルニア: 過去に椎間板ヘルニアを起こしたことがある場合、その影響で脊柱管が狭くなることがあります。
- 脊椎すべり症: 背骨が前後にずれる病気で、脊柱管を狭めることがあります。
- 外傷: 過去の背骨の骨折や手術などが原因で、脊柱管が狭くなることがあります。
- 先天的な要因: 生まれつき脊柱管が狭い方もいます。
これらの原因が単独で、あるいは複合的に関与して、脊柱管狭窄症は起こります。
脊柱管狭窄症の治療方法について
脊柱管狭窄症の治療方法は、症状の程度、患者さんの年齢、活動レベルなどを考慮して、保存療法と手術療法のいずれか、または両方を組み合わせて行われます。多くの場合、まずは保存療法から試みられます。
保存療法は手術を行わずに、症状の改善を目指す治療法です。
- 薬物療法: 痛み止めの内服薬、神経の痛みを和らげる薬、血流を改善する薬などを用いて、痛みを和らげます。
- リハビリテーション: 理学療法士の指導のもと、腰や足の筋肉を強化する運動、柔軟性を高めるストレッチ、正しい姿勢の指導などを行います。
- 装具療法: コルセットなどの装具を用いて、腰をサポートし、痛みを軽減することがあります。ただし、長期間の使用は筋力低下を招く可能性があるため、医師の指示に従って使用します。
- 生活指導: 日常生活での注意点(重い物を持たない、長時間同じ姿勢を避ける、適度な運動など)や、症状を悪化させる動作を避けるように指導します。シルバーカーの使用が歩行を助けることもあります。
手術療法は保存療法で十分な効果が得られない場合や、日常生活に著しい支障がある場合、排尿・排便障害がある場合などに検討されます。手術の目的は、狭くなった脊柱管を広げ、神経の圧迫を取り除くことです。
- 除圧術(椎弓切除術、椎弓形成術など): 背骨の一部を切除したり、形を変えたりすることで、脊柱管を広げ、神経の圧迫を取り除く手術です。
- 脊椎固定術: 背骨の不安定性がある場合や、除圧術だけでは症状の改善が見込めない場合に、背骨を金属などで固定する手術が行われることがあります。
近年では体への負担が少ない内視鏡を使った手術も行われるようになっています。
手術後のリハビリテーションも、スムーズな回復と再発予防のために非常に重要です。医師や理学療法士の指示に従い、適切な運動療法を行う必要があります。
治療の選択について
脊柱管狭窄症の治療法は、患者さん一人ひとりの状態に合わせて慎重に決定されます。医師と十分に相談し、それぞれの治療法のメリットとデメリットを理解した上で、最適な治療法を選択することが大切です。
歩行時の足の痛みやしびれでお困りの際は、我慢せずに当院までお気軽にご相談ください。早期の診断と適切な治療、そして日々のケアが、症状の改善とより快適な生活を取り戻すために重要です。