股関節の痛み
「歩くたびに股関節が痛む…」「立ち上がる時に股関節がズキッとする…」股関節は、立つ、歩く、座るなど、日常生活の基本的な動作に深く関わる重要な関節です。そのため、股関節に痛みが生じると、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。軽い違和感で済むこともあれば、夜も眠れないほどの激しい痛みに悩まされることもあります。
このページでは、そんな股関節の痛みについて、その様々な症状、病院での診断方法、考えられる原因、さらに具体的な治療法まで、詳しく解説していきます。「もしかして、私の股関節の痛みも何か原因があるのかな?」と感じている方は、ぜひこの先を読み進めてみてください。
股関節の痛みの症状について
股関節の痛みといっても、その現れ方や感じる場所は様々です。
- 鼠径部(太ももの付け根)の痛み:股関節の前側、太ももの付け根あたりに痛みを感じることが最も一般的です。
- お尻の痛み:股関節の後ろ側、お尻の奥の方に痛みを感じることもあります。
- 太ももの外側や内側の痛み:股関節の動きに伴って、太ももの外側や内側に痛みを感じることがあります。
- 膝の痛み:股関節の痛みが、太ももを通じて膝に響くように感じることがあります。
- 可動域制限:股関節の可動域が悪くなり、足を上げにくい、開脚しにくい、股関節を回しにくいなどの症状が現れることがあります。
- 跛行(びっこを引く):痛みをかばうために、歩き方が不自然になることがあります。
- 夜間の痛み:寝ている時や安静にしている時にも痛みを感じることがあります。
- 立ち上がりや歩き始めの痛み:しばらく座っていた後や、朝起きて最初に動き出す時に、特に強い痛みを感じることがあります。
これらの症状は、痛む場所やタイミング、他の症状の有無などによって、原因となっている病気や状態が異なる可能性があります。
股関節の痛みの診断方法について
医療機関では、股関節の痛みの原因を特定するために、いくつかの方法を組み合わせて診断を行います。
- 問診:いつから、どこが、どのように痛むのか、どのような時に痛みが強くなるのか、過去の怪我や病歴、生活習慣、スポーツ歴などを詳しく聞かれます。できるだけ具体的に伝えることが大切です。
- レントゲン検査:骨の変形、関節の隙間の狭まり、骨棘(骨のとげ)の有無などを確認するために行われます。
- MRI(磁気共鳴画像)検査:レントゲンでは写りにくい、軟骨、靭帯、関節包、筋肉などの軟部組織の状態を詳しく調べることができます。早期の病変や微細な損傷の発見に有用です。
これらの検査の結果を総合的に判断して、股関節の痛みの原因が特定されます。
股関節の痛みの原因について
股関節の痛みの原因は、年齢や生活習慣、既往歴などによって様々です。
- 変形性股関節症:加齢や使いすぎなどにより、股関節の軟骨がすり減り、関節が変形することで痛みが生じます。日本人に多い原因の一つです。
- 臼蓋形成不全:股関節の屋根にあたる部分(臼蓋)の形成が不十分なために、股関節に負担がかかりやすく、若い頃から痛みが出ることがあります。変形性股関節症の原因となることもあります。
- 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI):大腿骨の付け根や臼蓋の形状異常により、股関節を動かす際に骨同士がぶつかり、軟骨や関節唇を損傷することで痛みが生じます。スポーツをする若い人に多いです。
- 関節唇損傷:臼蓋の縁にある軟骨組織(関節唇)が、スポーツや外傷、繰り返しの負荷などにより損傷することで痛みが生じます。
- 股関節周囲炎・滑液包炎:股関節の周りの筋肉や腱、滑液包などが炎症を起こし、痛みが生じます。
- 外傷(骨折、脱臼、捻挫など):転倒やスポーツ中の事故などにより、股関節を直接痛めることで激しい痛みが生じます。
- 特発性大腿骨頭壊死症:大腿骨の頭の部分への血流が悪くなり、骨組織が壊死してしまう病気で、進行すると強い痛みが生じ、股関節の破壊につながります。原因は不明なことが多いです。
- 関節リウマチ:自己免疫疾患の一つで、全身の関節に炎症が起こりますが、股関節にも症状が現れることがあります。
- 化膿性股関節炎:細菌感染により股関節に炎症が起こり、激しい痛み、発熱、 可動域制限などを伴います。
- 小児の股関節疾患:ペルテス病や股関節脱臼など、小児期に発症する股関節の病気が、成人になってから痛みの原因となることがあります。
これらの原因が単独で起こることもあれば、いくつか重なって痛みを引き起こすこともあります。
股関節の痛みの治療法
股関節の痛みの治療法は、原因となっている病気や症状の程度、患者さんの年齢や活動レベルなどによって異なります。
- 保存療法:手術以外の治療法で、痛みの軽減と機能改善を目指します。
- 安静:痛みが強い場合は、無理な運動や動きを避け、安静にすることが大切です。
- 薬物療法:痛み止め(内服薬、湿布、塗り薬など)、炎症を抑える薬などが用いられます。
- リハビリテーション:ストレッチや筋力トレーニングを行い、股関節周りの筋肉の柔軟性や筋力強化を図り、関節可動域や痛みを改善します。杖などの歩行補助具を使用することもあります。
- 手術療法:保存療法で十分な効果が得られない場合や、病状が進行している場合に行われます。
- 人工股関節置換術:傷んだ関節を人工の関節に置き換える手術です。痛みの軽減と関節可動域の改善に高い効果が期待できます。
- 関節鏡手術:小さな傷から内視鏡を挿入し、関節内の状態を確認しながら、損傷した組織の修復や異常な骨の切除などを行う手術です。FAIや関節唇損傷などに対して行われることがあります。
大切なのは、痛みを我慢せずに、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることです。また、日頃から適切な体重を維持し、股関節に負担のかからないような生活習慣を心がけることも重要です。この情報が、皆様の股関節の痛みの理解と改善の一助となれば幸いです。もし、気になる症状がある場合は、自己判断せずに、早めに整形外科を受診してください。