下肢のしびれ
「なんだか足がピリピリする」「太ももからつま先にかけてジンジンする」「足の裏の感覚が鈍い」といった下肢のしびれを感じたことはありませんか?下肢のしびれは、日常生活で比較的よく起こる症状ですが、その原因は様々です。軽いものから、重大な病気が隠れている可能性もありますので、放置せずにしっかりと原因を突き止め、適切な対処をすることが大切です。
このページでは、下肢のしびれについて、どのような症状が現れるのか、どのように診断されるのか、そしてどのような原因や病気が考えられるのか、さらにどのような治療法があるのかを詳しく解説していきます。ご自身の症状と照らし合わせながら、理解を深めていただければ幸いです。もし気になる症状があれば、自己判断せずに専門医を受診することをおすすめします。
下肢のしびれの症状について
下肢のしびれといっても、その感じ方や現れる場所、伴う症状は多岐にわたります。具体的には、以下のような症状が現れることがあります。
- 感覚の異常:
- ピリピリ、チクチクとした痛み
- ジンジン、ビリビリとした痺れ
- 触った時の感覚が鈍い、または全くない(感覚麻痺)
- 冷たい、または熱いといった温度感覚の異常
- 締め付けられるような感覚
- 虫が這うような感覚
- 運動機能の低下:
- 足に力が入りにくい
- 歩きにくい、つまずきやすい
- つま先が上がりにくい(鶏歩)
- その他の症状:
- 腰や背中の痛み
- お尻の痛み
- ふくらはぎや足の痛み
- 冷え
- むくみ
これらの症状は、片足だけに現れることもあれば、両足に現れることもあります。また、太もも、すね、ふくらはぎ、足の裏、つま先など、しびれる場所も様々です。安静にしている時に症状が強くなる場合や、特定の動作(歩行、立ち上がりなど)をした時に症状が現れる場合など、症状の現れ方も人によって異なります。ご自身の症状を詳しく把握しておくことは、医師に伝える上で非常に重要です。
下肢のしびれの診断方法について
医療機関では、下肢のしびれの原因を特定するために、様々な診断方法が用いられます。
- 問診: まず、患者様から症状の詳細な情報を伺います。いつから、どのような時に、どこに、どのようにしびれを感じるのか、他に気になる症状はないかなど、詳しくお話をお伺いします。既往歴や生活習慣、仕事の内容なども診断の重要な手がかりとなります。
- 神経学的検査: 医師が、患者様の感覚、運動能力、反射などを確認する検査を行います。例えば、触覚や痛覚、温度覚の検査、筋力テスト、腱反射の検査などを行い、どの神経に異常がある可能性があるかを調べます。
- 画像検査:
- レントゲン検査: 腰や股関節の骨の異常(変形、骨折、腫瘍など)の有無を確認します。
- MRI(磁気共鳴画像)検査: 椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍、神経の圧迫など、軟部組織の状態を詳しく調べることができます。
これらの検査を組み合わせて行うことで、下肢のしびれの原因となっている病気や状態を特定し、適切な治療法を選択することができます。
下肢のしびれの原因について
下肢のしびれの原因は多岐にわたります。主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 神経の圧迫:
- 腰椎椎間板ヘルニア: 腰の骨の間にある椎間板が飛び出し、足につながる神経を圧迫することで、お尻から足にかけてしびれや痛みが生じます。
- 腰部脊柱管狭窄症: 加齢などにより腰の脊柱管(神経の通り道)が狭くなり、神経が圧迫されることで、歩行時などに足のしびれや痛みが生じます。
- 坐骨神経痛: お尻から太ももの後ろ、ふくらはぎ、足先にかけて伸びる坐骨神経が何らかの原因で圧迫されたり刺激されたりすることで、痛みやしびれが生じます。
- 血行不良:
- 末梢動脈疾患: 動脈硬化などが原因で、足の血管が狭くなり、血流が悪くなることで、しびれや冷えを感じることがあります。
- 閉塞性血栓性血管炎(バージャー病): 主に喫煙者に多い病気で、足の血管が詰まり、痛みやしびれ、ひどくなると潰瘍ができることがあります。
- その他の病気や状態:
- 糖尿病性神経障害: 糖尿病の合併症として、末梢神経が障害され、しびれが生じることがあります。
- 脳卒中: 脳の血管が詰まったり破れたりすることで、運動麻痺や感覚障害の一つとして下肢のしびれが現れることがあります。
- 多発性硬化症などの神経系の病気: 脳や脊髄の神経線維が障害されることで、様々な神経症状の一つとして下肢のしびれが現れることがあります。
- 薬の副作用: 特定の薬の副作用として、末梢神経障害が生じ、しびれが出ることがあります。
- 足根管症候群: 足首の内側にある神経(後脛骨神経)が圧迫されることで、足の裏や指にしびれや痛みが生じます。
下肢のしびれの治療法
下肢のしびれの治療法は、その原因となっている病気や状態によって大きく異なります。
- 保存療法:
- 安静: しびれの原因となっている部位を安静に保つことが重要です。
- 薬物療法: 痛みや炎症を抑えるための内服薬(鎮痛剤、消炎鎮痛剤、神経障害性疼痛治療薬など)、血行を改善する薬、ビタミン剤などが用いられることがあります。
- 装具療法: 腰や足首などを固定する装具を使用することで、神経への負担を軽減します。
- リハビリテーション: 運動療法やストレッチ、神経や筋肉の滑りを良くする手技などを行い、機能回復を目指します。
- 注射療法: 痛みが強い場合や、特定の神経の炎症を抑えるために、局所麻酔薬やステロイド薬を注射することがあります。
- 手術療法:
- 保存療法で症状が改善しない場合や、麻痺が進行している場合などには、手術が検討されることがあります。手術の方法は、原因となっている病気によって異なります(例:腰椎椎間板ヘルニアに対するヘルニア摘出術、腰部脊柱管狭窄症に対する除圧術など)。
- 生活習慣の改善:
- 長時間の同じ姿勢を避ける
- 適度な運動を心がける
- 禁煙する
これらの治療法は、患者様の状態や原因に合わせて、医師が適切なものを選択し、組み合わせて行われます。自己判断せずに、まずは専門医に相談することが大切です。