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上腕骨内側上顆炎
(ゴルフ肘)

ゴルフ肘について

ゴルフ肘は、ゴルフ愛好家によく見られる肘の痛みの代表的な疾患ですが、ゴルフをする人だけでなく、日常生活や仕事で手首や指をよく使う様々な年代の方にも起こりうる病気です。医学的な正式名称は「上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)」といいます。
肘の内側にある骨の突起(上腕骨内側上顆)に痛みと強い圧痛を感じます。また上腕骨内側上顆には手首や指を曲げる筋肉や、腕を内側にひねる筋肉の腱(けん)が付着しています。ゴルフのスイングでボールを打つ際の衝撃や、日常生活での手首を曲げる動作の繰り返しなどによって、この腱に小さな傷がついたり、炎症が起きたりすることで、肘の内側に痛みが生じるのがゴルフ肘です。
テニスをする人に多い「テニス肘(上腕骨外側上顆炎)」が肘の外側に痛みが生じるのに対し、ゴルフ肘は肘の内側に痛みが生じるのが特徴です。初期の段階では、物を握ったり、手首を曲げたりする際に、肘の内側に軽い痛みを感じる程度であることが多いですが、症状が進行すると、日常生活に支障をきたすほどの強い痛みになることもあります。仕事だけでなく、子育てで抱っこをよくするお母さんにも頻発します。「たかが肘の痛み」と安易に考えずに、早期に適切な対応をすることが、症状の悪化を防ぎ、早期の改善につながります。

ゴルフ肘の症状について

ゴルフ肘の主な症状は、肘の内側の痛みです。しかし、痛みの程度や現れ方は人によって様々です

  • 肘の内側の痛み: 肘の内側の骨の突起(上腕骨内側上顆)を中心に、押すと強い痛みを感じます。
  • 手首を曲げる際の痛み: 手のひらを上に向けて、手首を下に曲げる動作(例えば、物を持ち上げる)をすると、肘の内側に痛みが走ります。
  • 物を握る際の痛み: ボールを握る、タオルを絞るなど、手で何かを強く握る動作をすると、肘の内側に痛みを感じることがあります。
  • 腕を内側にひねる際の痛み: ドアを閉める、ドライバーを回すなど、腕を内側にひねる動作で肘の内側に痛みを感じることがあります。
  • 肘から前腕にかけての痛み: 肘の痛みだけでなく、前腕の内側にかけて痛みを感じることもあります。
  • 指の痺れ: まれに、肘の内側を通る神経(尺骨神経)が圧迫され、小指や薬指の一部にしびれを感じることがあります。

これらの症状は、多くの場合徐々に現れます。特に、ゴルフの練習後や、手首や肘をよく使う作業をした後に症状が悪化することが多いです。少しでも気になる症状があれば、整形外科などの専門医を受診しましょう。

ゴルフ肘の原因について

ゴルフ肘の直接的な原因は、肘の内側に付着する手首や指を曲げる筋肉や、腕を内側にひねる筋肉の腱の炎症や損傷ですが、その背景には様々な要因が考えられます。

  • 使いすぎ(オーバーユース): ゴルフのスイングで繰り返しクラブを振る動作や、日常生活や仕事で手首を曲げる動作を頻繁に行うことで、腱に過度な負担がかかり、小さな傷が積み重なって炎症や損傷を引き起こします。
  • 不適切なフォームや道具: ゴルフの場合、スイングフォームが悪かったり、クラブのサイズやグリップが適切でなかったりすると、肘への負担が増加します。
  • 筋力不足: 手首や肘周りの筋肉だけでなく、肩や体幹の筋力不足も、動作時の肘への負担を大きくする要因となります。
  • 柔軟性不足: 手首や肘、肩周りの筋肉や関節の柔軟性が不足していると、スムーズな動作ができず、一部分に負担が集中しやすくなります。
  • 加齢: 年齢とともに腱の組織が変性し、 肘へのストレスを受けやすくなることがあります。
  • 急な負荷の増加: 今まで行っていなかった作業や運動を急に始めたり、運動量を急激に増やしたりすると、腱が対応できずに炎症を起こすことがあります。
  • 作業環境: 長時間同じ姿勢での作業や、不適切な作業台の高さなども、肘への負担につながることがあります。

これらの要因が単独で、あるいは複数組み合わさってゴルフ肘を引き起こすことがあります。
医師の診察や画像検査(レントゲン検査では骨の状態を確認し、必要に応じて超音波検査やMRI検査で腱の状態を確認することがあります)によって、病態を正確に把握し、適切な治療法を選択することが重要です。また、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫されて症状が出ている場合は、「肘部管症候群」として区別されることがあります。

ゴルフ肘の治療方法について

ゴルフ肘の治療は、痛みを和らげ、肘の機能を回復させ、再発を予防することを目的として行われます。基本的には保存療法を行います。

保存療法

手術を行わない治療法で、初期の軽度な症状に対して行われることが多いです。

  • 安静: 痛む動作を避け、肘を休ませることが最も重要です。ゴルフはもちろん、日常生活でも手首や肘に負担のかかる動作はできるだけ控えます。
  • アイシング: 炎症を抑え、痛みを和らげるために、患部を冷やします。痛みを感じた時や、手首や肘を使った後に、15〜20分程度を目安に行います。
  • 薬物療法: 痛みや炎症を抑えるために、湿布や塗り薬、内服薬(痛み止め)などが用いられます。
  • 装具療法: 肘のサポーターやバンド(ゴルフエルボーバンド)を使用することで、腱の付着部にかかる負担を軽減し、痛みを和らげることができます。
  • リハビリテーション: 痛みが落ち着いてきたら、肘や手首周りの筋肉の柔軟性や筋力を回復させるためのリハビリテーションを開始します。理学療法士などの専門家の指導のもと、ストレッチや筋力トレーニングを段階的に行います。特に、手首を曲げる筋肉(屈筋群)だけでなく、伸ばす筋肉(伸筋群)のトレーニングもバランスよく行うことが重要です。肩や体幹のトレーニングも、肘への負担を軽減するために役立ちます。ゴルフのフォーム指導が行われることもあります。
  • 注射療法: 痛みが強い場合や、炎症がなかなか引かない場合には、局所麻酔薬やステロイド薬の注射が行われることがあります。ただし、注射はあくまで一時的な痛みの緩和を目的とすることが多く、根本的な治療には安静やリハビリテーションが重要となります。近年では、PRP(多血小板血漿)療法などの再生医療も試みられています。

手術療法

手術療法は保存療法で十分な効果が得られない場合や、腱の断裂が重度な場合に検討されることがあります。炎症を起こしている腱の一部を切開したり、尺骨神経が圧迫されている場合には神経の圧迫を取り除く手術が選択されることがあります。

おわりに

ゴルフ肘の予防には、運動前の十分なウォーミングアップとストレッチ、正しいフォームの習得、自分に合った道具の使用、使いすぎを避けること、日頃から手首や肘周りの筋肉の柔軟性と筋力を維持することなどが重要です。

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